INTERVIEW インタビュー

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雑誌SWITCHインタビュー『王道の外側にある多様な可愛さ 』片桐仁

この記事は「SWITCH Vol.41-No.1」に掲載された記事を許諾を受けて転載しています。

TEXT: KURATA YOSHIKO
STYLING: KATAOKA MAYAKO
HAIR & MAKE-UP: KUNIKI NAHO


王道の外側にある多様な可愛さ

生き物に囲まれて暮らす俳優・粘土作家の片桐仁。造形物への 審美眼をもつ彼が初めて体験する『リヴリーアイランド』での暮らしとは

雑誌SWITCHインタビュー『王道の外側にある多様な可愛さ 』片桐仁

ホムを理想の自分に置き換える

━━今回『リヴリーアイランド』を初めて体験されたそうですね。普段からゲームはよくされますか?

「ゲームは普段RPGをよくプレイしています。子供たちの様子を見ていると、パソコン、スマホ、ゲームソフト全て使っていて『お前ら一体何個やるんだよ』って心の中でつっこんでいます(笑)。僕自身は家庭の方針で幼少期からゲームをやらせてもらえなくて。高校二年生の時に、友達が受験に集中するために部室に置いていったファミコンをプレイしたのが初めてのゲーム体験でした。既に当時はスーパーファミコンが全盛の時代だったので、ハマるのがかなり遅いんですけど(笑)」

━━リヴリーアイランドはご存知でしたか?

「息子が知っていて、『うんこが宝石になるやつでしょ』って言われた時は衝撃でした(笑)。僕は知らなかったんですけど、それぞれのリヴリーの体格の違いだったり、様々な色に変化するところだったり、どこか違和感のある可愛さに惹かれていきました。可能性を感じるというか」

━━最初にリヴリーアイランドを開いた時、リヴリーとホム、そしてご自身の関係性はどのように感じましたか?

「正直最初はわからなかったですね。開いた瞬間から、何をすればいいのかわからなくてかえって新鮮でした。後からPCブラウザゲームだった頃のリヴリーアイランドにはホムがいないことを知りました。だんだんと、ホムがいることで安心感があるというか、放っておいてもどうにか二人でやってくれるんじゃないかと思えるようになりましたね」

━━存在としては、ホムは片桐さんの分身のように感じていますか。

「分身というより、理想の自分ですね。他のゲームでも自然と女性キャラクターを選びがちなんですが、自分自身が衣装やメイクなどで可愛く着飾れることに憧れを抱いているんだと思います。最初にガチャを引いた時、たまたま制服風の衣装が出てきたこともあって、ホムの服装はそれに落ち着きました」

━━ほかのアイランドの方々とは交流されましたか?

「数人の方にフレンド申請をしました。ひとりとして同じアイランドがないのが面白いですよね。百日以上プレイしている方のアイランドは、デコレーションが細かくて感動しました」

━━色々とガチャを引いたり、他の人のアイランドを見たりした上で、最終的にどのようなコンセプトのアイランドにしましたか?

「ホラーっぽいダークな世界観の中に、キモかわいいリヴリーたちが集まってるイメージです。あとは他の人みたいに、リヴリーの色を変えてみたりしたいですね」

━━リヴリーの変身も体験していただきましたが、お気に入りのリヴリーは?

「『モモス』、『オーガ』、『カンボジャク』の三匹がいいなと思いました。モモスは変身薬で『マダラカガ』になってしまって、可愛くなくなっちゃったなとがっかりしたのですが、毎日接しているとこれはこれで可愛いですね。オーガは大きすぎるから、あえてアイランドの外側に居てもらってます(笑)。最後にいいなと思ったのはカンボジャク。生き物全般的に、ちょっと気持ち悪い方が好きなんですよね」

━━片桐さんが自由にリヴリーをデザインできるとしたら、どんな造形のものを考えますか。

「先ほど少しお話しした通り、少し不気味な生き物が好きなので、どろどろしているのにどこか愛らしいリヴリーなんかいいですね。ゾンビみたいなものがうごめいてる感じや、圧倒的な生命感を表現しているような」

━━今までにないリヴリーですね(笑)。片桐さんは粘土で作品づくりをされていますが、そこでも不気味なかたちの生き物をつくられているんですか?

「そうですね。今までiPhoneケースを二十個程つくってきたんですが、どれも少し不細工だけど可愛らしさがあるようなバランスを意識してつくっています。今日持ってきたiPhoneケースは、ダジャレが着想点なんです。左からカレイフォン、鯛フォン、サイフォンになります。カレイフォンに至っては、実際のカレイはこんな顔じゃないんですけど、眼をカメラのレンズにして意図的に人面魚のようにしていますし、鯛フォンは人間の歯と歯茎をつけてリアル感を出してみたり。鯛フォンは、初期の頃に気合を入れてディティールまでつくりこんでしまったので、いざ持ってみたら背びれ部分のトゲが痛いんですよね。全然実用的じゃないケースになっちゃって(笑)」

片桐が自作したiPhoneケース。完成度が高く、様々な細工が施されている

━━今日使っているケースは、モアイ像ですね。かなり分厚いですが……。

「モアイフォンです。実は、頭の部分に爪楊枝が入るようになってるんですよ!(笑) iPhoneがこれだけ便利になっても、やっぱり爪楊枝の便利さは補えないですから」

━━まさかの仕掛けでした(笑)。お家でも犬や鳥を飼われていますが、幼い頃から生き物に親しみがあったのでしょうか?

「幼少期は埼玉県で育ちました。団地住まいだったこともあって、動物を育てたくても難しかったんです。でも、外に出ればウシガエルやホタルがたくさんいるような自然豊かな環境でした。結婚してから、妻が小学校五年生の頃から飼っているインコを連れてきたのと、犬は震災後に一匹引き取りました。その子が亡くなった後も保護犬二匹を迎え入れています。あとは動物以外にも、コブナナフシという昆虫を二百匹程飼育しています」

━━コブナナフシが大量にいらっしゃるんですね……。昆虫の魅力とはどんなところにありますか?

「コブナナフシはメス単体でも繁殖するからエンドレスで増えるんです(笑)。昆虫の面白さは、幼虫を見つけた時に、図鑑で調べて種類を特定したとしても、越冬すると全然違う成体が出てくることがあって、絶えず驚きがあるところですかね。昆虫学者さんの間では、昆虫採集する時に『捕まえる』ではなく『会いに行く』と表現するそうです。昆虫の世界にピントを合わせないとなかなか見つからないからこそ、『会いに行く』という対等な関係性の言葉を使うみたいですね。図鑑で調べてわかったようなつもりでいても、実際に昆虫と触れ合ったり会いに行ったりすると、見えていないものがたくさんあるのを実感します」

━━変身薬を使って変身したリヴリーたちの姿にも驚かれていましたね。

「そうですね。予想していなかった変身だったので、最初はびっくりしました。難しいと思いますが、リヴリーも昆虫みたいに、それぞれが独自の変身をしたら面白いですよね。同じリヴリーを選んでも、友達のリヴリーとは変身の仕方が違ったり、同じリヴリー二匹でも自分のアイランド内で異なる変化を遂げたり」

━━粘土づくりにも、そういった予想できない面白さがあるのでしょうか?

「二十年間粘土で作品をつくり続けているので、創作においては手癖というか、パターンのようなものは見えているんです。ただ、最後に彩色する時に思いがけない方向に行き着くことがあって面白いですね。例えば、このサイフォンは最初ピンクに塗っていたのですけど、塗っていくうちにだんだんカバに見えてきて(笑)。それで最終的に上から水色を足したら不思議な色合いになりました」

正解がないからこそ広がる世界

━━お子さんとご一緒にワークショップをされているとお聞きしました。自分がつくったものを誰かとシェアする喜びもある、と。

「定期的に行なっている子供向けのワークショップでは、彼らの自由な発想にいつも刺激をもらいますね。終わってから『僕の頭が固かったのかもしれない』と思わされることが度々あります。特に粘土作品は、子供たちが思っている程上手くいかないこともあって、だからこそみんなでつくったものを見せ合う楽しさがあると思うんです」

━━リヴリーアイランドも決まりきった正解がなく、個々の感性でアイランドを作り上げることで生まれるコミュニケーションが魅力のひとつですよね。片桐さんは、リヴリーも含めてどういった生き物に惹かれますか?

「実際の生き物ではないですけど、岡本太郎の『太陽の塔』は好きですね。感覚的な話になってしまいますが、実物を目の前にした時の異常な大きさや滑らかな造形に心奪われます。昆虫や動物などの生き物に対してもそうですが、筋肉の流れなど彫刻的な美しさに加えて、違和感を抱かせる部分がある可愛さや美しさが好きなのかもしれません。リヴリーたちもただ可愛いだけではなく、それぞれのキャラクターにちょっとした違和感や独自性があるのが魅力的だと思いました」

リヴリーもただ可愛いだけではなく、 それぞれのキャラクターにちょっとした違和感や 独自性があるのが魅力的だと思いました ━━片桐仁

━━普段から生き物に囲まれて暮らしている中で、リヴリーとのコミュニケーションに何か感じるものはありましたか?

「リヴリーに呼ばれているわけでもないのに、定期的にアイランドを訪れたくなるんですよね。クリアしないといけない課題が多かったら面倒だと思ってしまったり、その日限りの達成感だけだったら続けられないかもしれません。だけどそんなこともなく、むしろ彼らから優しい癒しをもらえる場所。時間の概念に囚われていないから、ゆったりとした時の流れを感じられます。あと、他のアイランドの人たちとの交流もプレッシャーがなく、気楽にコミュニケーションできるので、これからもっとアイランドのアイテムを豊かにしてフレンドを増やしていきたいと思います」

片桐が実際にプレイしている『リヴリーアイランド』のプレイ画面。ホラーチックなイメージで統一された世界観のアイランド。奇抜なリヴリーたちとセーラー服に黒い翼が生えたホムが印象的

▼プロフィール
片桐仁 一九七三年生まれ。現在、俳優としてテレビや舞台、ラジオにて幅広く活躍し、また粘土作家として個展を開催するなど芸術への造詣も深い。自身のYouTubeチャンネル『ギリちゃんねる』では家族で様々な創作にチャレンジしている

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