INTERVIEW インタビュー

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雑誌SWITCHインタビュー『現実と想像/妄想の狭間にあるゲーム』ハライチ 岩井勇気

この記事は「SWITCH Vol.40-No.11」に掲載された記事を許諾を受けて転載しています。
PHOTOGRAPHY :GOTO TAKEHIRO
TEXT :KURATA YOSHIKO


現実と想像/妄想の狭間にあるゲーム

クラシック版から『リヴリーアイランド』をプレイしてきたというお笑いコンビ・ハライチの岩井勇気。独自の世界観を持つ彼ならではの視点でゲームの魅力を紐解く

雑誌SWITCHインタビュー『現実と想像/妄想の狭間にあるゲーム』ハライチ 岩井勇気

リヴリーはこちら側を楽しませる素ぶりや目的を持っていないからこそ、実際に生きている現実味が強く感じられるような気がします

知らない者同士がフラットに遊べる世界

━━岩井さんはクラシック版の『リヴリーアイランド』から楽しんでいるそうですね。リヴリーアイランドに限らず、幼少期からよくゲームはされていたんですか?

「小学校からずっとやっていましたね。元々母親がゲーム好きで、妊娠中もずっとファミコンにハマっていたらしいので、生まれた時から身近にゲームがある環境で育ちました」

━━そこからリヴリーアイランドに出会ったきっかけについて教えてください。

「当時『ハンゲーム』にハマっていて、そこで出会った友達に誘われたのが最初のきっかけですね。あくまでもオンライン上の友達なので、結局リアルでは一度も会ったことがないんですけど、その人がアバターゲームをよくやっていたことからリヴリーアイランドを教えてくれたんです。その人の着せ替えやアイランドが充実していたので、他の人のアイランドを見に行くのが楽しかったですね」

━━クラシック版では、最初に自分でリヴリーを選べましたが、どのリヴリーがお好きでしたか?

「“アメノヒグラシ”を最初に選んでそのままずっと育てました。アメノヒグラシに限らず、日本のキャラクターデザインにはあまりない雰囲気が不思議だったことを覚えています。しかも『かわいいでしょ!』と主張してくることもなく、その押し付けがましくない感じが独特で、ゆるく続けられたポイントだったかもしれません」

━━特に表情があるわけでも、こちらに訴えかけてくるわけでもなく、淡々と日常を生きている。

「そうですね。ただただアイランドでリヴリーたちの生活があって、それを見ていることが楽しいです。ただ、特にクラシック版では自分で世話をしなかったら本当に死んでしまうので、“弱きもの”というイメージもありました。例えて言うなら熱帯魚に近いかもしれない。熱帯魚も無表情だしこちらにすり寄ってくることもないけれど、何もしなければ死んでしまうじゃないですか」

━━そうやってリヴリーとのコミュニケーションが過剰過ぎないからこそ、自然と愛着が湧いてくるのかもしれませんね。

「もし何か決まったストーリーの上に存在していたら、味付けが濃すぎて本当に生きているという実感が湧かなかったと思います。でも、リヴリーはこちら側を楽しませる素ぶりや目的を持っていないからこそ、実際に存在しているという感覚がありますね」

━━先程お話しされたように、クラシック版はちゃんとお世話をしないと死んでしまうというシビアなつくりでしたが、毎日のお世話はどうしていましたか?

「十五年前の当時は一日ログインしないだけで友達から心配されるほど毎日やり込んでいたので、むしろ向こう側にいっぱい友達がいたんですよね。ログインすれば誰かいるという安心感もあって、自然とお世話していましたが、ログインしていない間は真っ暗闇なんじゃないかとか、飢え死にしてしまうんじゃないかとか心配な気持ちもありました。スマホアプリになってからは“ホム”がいるので代わりに世話してくれるかなと思えるんですけどね」

━━スマホアプリ版は最近始められたということですが、アプリ版から登場したホムの存在はどのように感じていますか?

「ホムと通心を始める“コネクト”があることで、自分の分身のように感じられています。今まで他のゲームをやっていても画面の向こう側に自分を重ねることはそれほどなかったので、最初の頃は『この機能って意味あるのかな』と疑問に思っていたのですが、むしろこの機能を使うことでよりその世界に入り込める感覚があって」

━━実際に岩井さんのアイランドを見せていただけますか?

「自分の中で設定があって、元々オーガは南国で暮らしているんですけど、白くて涼しそうな砂丘に住まわせることで、普通のオーガとは違う亜種としてこの三匹を育てています(笑)。リヴリーは与える餌で色が変わるんですけど、先に一匹だけ真っ白になっちゃって、あとの二匹はまだピンクの状態ですね……」

━━雪国のように真っ白な風景ですね。そして、三匹とも頭にハートのアンテナが付いています。

「よく見るとそれぞれ色が違っていて、先に白くなった一匹が赤、他の二匹を青にしています。赤色のやつはオリジナルのオーガで、青色の二匹はクローンという設定。そんな遊び方もしています(笑)。さらにその先の設定としては、このアンテナによってホムが自分より大きなオーガを自由自在に操れるようになっていて、侵入者が来たら守ってくれるボディガード的な存在として育てています。でも、“気ままに”などの機能で移動する時だけ、オーガがホムを抱えることがあって。その時はちょっとコントロールが行き届いてない暴走モードだなとニヤッとしながら見ています(笑)」

━━岩井さんならではの世界観が出来上がっているんですね。クラシック版から続けるなかであらためて気付かされたリヴリーアイランドの魅力について教えてください。

「クラシック版の頃から変わらず、悠長な世界観が続いている奇跡的なゲームだと思います。僕がリヴリーアイランドを始めたきっかけもそうですが、人に勧めやすい心穏やかなゲームですよね。しかも男女関係なく興味が持てるし、特に対戦や技術を試されるわけでもないから、誰でも始めやすい。日常的に続けていたら、いつの間にか何年もやっていたという居心地の良さがリヴリーアイランドならではの魅力だと思います」

<プロフィール>
岩井勇気 一九八六年生まれ。お笑いコンビ「ハライチ」として活躍中。芸人活動の一方で、ゲーム『君は雪間に希う』(Nintendo Switch、Nintendo Switch Lite専用ソフト)の原作・プロデュース、マンガ『ムムリン』の原作、書籍の発表など多岐に渡り活動

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